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更新日:2024年2月10日
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八木山動物公園スタッフブログ「八木ZOO通信」
お昼時に自動車で移動した際、道すがらこのような光景を目にしました。
薪材を運ぶ女性と三石かまどが並ぶ路地
マダガスカル訪問記の第1回でも触れたとおり、マダガスカルの主食はお米なのですが、国内のガスや電気の普及率が高くないので、多くの家庭やお店がかまどで炊事をします。
ここには昼食を売るお店が集まっていたようで、たくさんの三石かまど(大きめの石を3つ並べ、その上に鍋などを置く簡単な作りのかまど)が道沿いに並んで白煙をたなびかせていました。
それはそれで壮観でしたが、実は、このかまどに問題があるのです。
ご覧のとおり自然石を組み合わせて作られているのですが、石の大きさ・形がまちまちなので、どうしても隙間ができてしまいます。
このため、鍋などに効率的に熱を伝えることができず、煮炊きに大量の薪や炭が必要となります。
薪などの大量消費は大規模な森林の伐採につながり、マダガスカルの貴重な生物の生息域を奪いかねません。
このため、当園では、平成29年度から宮城教育大学と協力して実施したJICA草の根技術協力事業「動物園を拠点とする生物多様性保全のためのESDプロジェクト」のなかで、より熱効率が良い「改良かまど」の紹介・普及に努めました。
当園のマダガスカルコーナーに展示している2種類のかまど
この時は、アイアイが生息する森林の近くにあり、森林の伐採を控えてもらうことが生物多様性の保全に貢献すると考えられた、マダガスカル北西部のアンジアマンギーラナという村落で「改良かまど」と植林に関する講習会を開いたり、チンバザザ動植物公園の中に「改良かまど」について学習できる展示を設けたりして手応えを感じていたのですが、何分にも日本の約1.6倍の国土をもつ大きな国ですので、まだまだ改善の取組みが必要なようです。
チンバザザ動植物公園内に設けられた、改良かまどの啓発施設
今回のマダガスカル訪問では、幸いにもマダガスカルのご家庭の暮らしぶりを見ることができました。
我々は、今後の支援のヒントをつかむため、マダガスカルの一般的な方々の話を聴き、その暮らしぶりを見てみたいと考えておりました。
アンダシベからの帰り道に炭や薪の売り場が集まっている集落があり、そのうちのあるご家庭を訪問する機会を得ました。
右手に見えるのが、炭や薪の売り場。我々が訪問したのは、左手の先に見えるご家庭。
そのご家庭では、他の方に薪を集めてきてもらい、これを炭に加工して販売しているとのことでした。
家は平屋で、居間1部屋と寝室2部屋、炊事場がありました(ここでは、既製品のしっかりとしたかまどを使っていました。)。
住んでいるのは、若いご夫婦と、小学生くらいの娘さん3人、お母さんの妹さんの計6名です。
この家は、もともとは、お母さんのご実家が建てたものだそうです。
玄関口
炊事場の様子。手前の袋の中には炭がぎっしり。
右奥に見える緑のバケツのようなものが、かまど。
トイレは屋外の別棟にあります。
また、家の裏手は畑になっていて、石を並べて区切ってありました。家の前の庭には、鶏がいました。
トイレを案内してくれたお父さん。
建物の中に穴が掘ってあり、いっぱいになったら穴を埋め、別の場所にトイレを移すとのこと。
お父さんの足元にも注目!
テレビは見当たりませんでしたがラジオとスマホをお持ちで、情報収集や娯楽はこれらが中心のようでした。
電気は通っておらず、電力は太陽光発電で賄っていました。
我々にラジオを聞かせてくれたり、照明をつけて見せたりしてくれましたが、マダガスカルでは、客人に貴重な電気を振舞うことも大切な「おもてなし」のひとつであるように思えました。
中央に見える台の左の方に置いてある黒いものがラジオ。
水道はなく、ポリタンクで水を汲んできている模様。
屋根の上で輝く四角い物体が、この家の電力を支える太陽光発電のモジュール
先代から始めた炭の販売で成功しており、集落内では裕福な部類に入るようでしたが、インフラの整備が進んでいないため、このようなご家庭でも電気やガスを日常的に使うことはできません。
帰りの道中ではたくさんの炭や薪の売り場を目にしましたが、依然としてマダガスカルではこれらが燃料として重要であることや、森林保護と炭などの製作・販売に携わる方々の収入の確保の両立という難しい課題があることを再認識することになりました。
先ほどのお宅を出てしばらく走ったところで、薪を積んだリヤカーの傍らで休んでいる親子を見かけました。
声をかけてみると、「路面が熱いので休んでいる。」とのこと。改めて足元を見てみると、二人とも裸足でした。
マダガスカルでは、特に裸足の子供が目につきました。
市場では様々な靴を見かけたので靴自体が不足しているわけではなく、経済的に靴が買えないとか、雨の日には道路がぬかるんだリ冠水したりするので靴を履いていない方が楽だとか、いろいろな理由があると思われます。
アンタナナリボ市内の市場での様子。奥のお店では様々な靴を販売中。
アンタナナリボ市内の、あまり裕福とは言えない地区の子供たち。
右側にいる白い上着を着た男の子は裸足。
この地区の通路はこの1本のみで、雨が降るとこのようなぬかるんだ状態に。
マダガスカルでは、怪我をした場合に破傷風等の感染症にかかるリスクが日本よりも高いとされており、我々一行も気を付けておりました。
WHOのレポートによれば、発展途上国の子供の死因の上位には感染症と怪我が入っており、おそらくマダガスカルでも同様の状況であると思われます。
子供が足の裏に刺さった棘か何かを抜いている姿も見かけましたし、足の怪我は、マダガスカルの子供たちにとって身近な危険であるといえるのかもしれません。
もちろん、感染症のリスクは子供だけのものではありませんので、大人も子供も靴を履いて足を守った方がよいと思われます。
しかしながら、先にご紹介した、その地域では比較的裕福と思われる炭売りのご家庭でも、お父さんがごく自然に裸足で外に出ていたように、靴を重視しない習慣はかなり根強いようです。
まずは、日常的に靴を履いて足を守ることの大切さを広く知ってもらう必要があるのでしょう。
お父さんの背中には、なぜか見慣れた文字が。
この親子は薪を運ぶことをなりわいとしているとのことで、この地域でも薪が重要な燃料のようです。
しばらくすると、足の裏が冷えたのか、次の集落に向けて出発しました。炎天下にかなりの距離を歩かなければならず、坂道も多いところでしたので、我々では裸足で挑むことなど想像もできません。
怪我をしないよう、また熱射病とならないように祈りながら、二人を見送りました。
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