現在位置 ホーム > ブログ・SNS > 八木山動物公園スタッフブログ「八木山ZOO通信」 > 園長ブログ 静かな動物園(10月9日)

ページID:77048

更新日:2024年10月9日

ここから本文です。

園長ブログ 静かな動物園(10月9日)

八木山動物公園スタッフブログ「八木ZOO通信」

ブログ記事一覧ページ

静かな動物園

当園は、来年(令和7年)に当地での開園60周年を迎えます。
この間、たくさんの動物とのお別れがありました。
その中には、いまとなってはなかなか飼育することができない貴重な動物や、市民の皆様に深く愛された動物がいました。
当園では、今後に役立てるため、亡くなった動物はすべて病理解剖して死因を究明していることは以前ご紹介しました(園長ブログ 動物の「死」を活かすために(2024年3月29日))ので、亡くなった動物たちのその後についてもお話してみようと思います。
病理解剖が済んだ動物たちの遺体は園内で荼毘(だび)に付すのが通例ですが、貴重な動物を中心に、できる限りはく製や骨格標本にして保存することとしています。
これにより、近くで動物の体の様子を観察したり、生きているときには見られない骨のつくりなどを観察したりできるようになるのです。
今回は、当園のビジターセンターにいる、こうした動物たちをご紹介します。
ここは、今年(令和6年)の9月にリニューアルし、展示動物の種類も増えていますので、前に観たことがあるという方も、ぜひ改めてお越しください。

ビジターセンターにはゼブラショップ側から入る方が多いようですので、我々もそちらから入ってみましょう。
まず出迎えてくれるのが、アミメキリンの全身骨格です。

ビジターセンター内展示場
ゼブラショップ側からビジターセンターに入ると目にする光景。手前にある首の長い骨格標本もアミメキリンのもの。角の生えた頭や長い首の骨の様子は、こちらの方が見やすいかも。

アミメキリンの全身骨格
アミメキリンの全身骨格。後ろに見えるのは、在りし日の姿。

キリンが大きな動物であることは理解していても、これだけ近くで観ると、その背の高さに圧倒されます。
また、こんなに長い首であっても、首の骨(頸椎)の数は我々と同じ7個であることがわかります。
このキリンは、「アミ」という名前のメスで、4回の出産を経験しています。
アミメキリンの平均寿命は飼育下で25年程度とされているところ、28歳まで生きたご長寿の人気者でもありました。
晩年は右の後肢の具合が悪くなり、最後は立てなくなってしまったのですが、この標本から、右の股関節に問題が起きていたことが確認できます。
右の股関節
右の股関節の様子。長期にわたる関節炎のため、骨が変形していたことがわかります。

 

奥に進んでいくと、アジアゾウの「トシコ」が待っています。
「トシコ」は、元々は大阪府堺市の水族館で飼育されていたのですが、昭和38年(1963年)に、いまの三居沢交通公園の場所にあった仙台市動物園にやってきました。
その後八木山への引っ越しを経験し、宮城県沖地震や東日本大震災も乗り越え、平成24年(2012年)7月27日に亡くなりました。
いまは広場となっていますが、アカカンガルーの展示場の隣にあったインドゾウ舎で妹分の「ヨシコ」と暮らしていて、私も幼いころにこの2頭の前で写真を撮ってもらったことがあります。
トシコの全身骨格標本
「トシコ」の全身骨格標本。こちらも、後ろに見えるのは、元気だったころの姿。

手前にあるのは、保存処置を施した「トシコ」の鼻です。
こちらをご覧になると、アフリカゾウとアジアゾウの鼻先のつくりの違いや、長いゾウの鼻の中には我々と同じく2つの穴が通っていること、ゾウの鼻には骨がなく筋肉でできていることなどがお判りになると思います。
「トシコ」は、亡くなってから10年以上が経った今でも、当園を訪れた方々にたくさんのことを教えてくれています。
なお、以前当園で飼育していたアフリカゾウの「ダン」と「ミミ」も骨格標本となっていて、仙台市科学館4階常設展示室の「宮城・仙台の自然」エリアで観ることができます。
ここでは、この2頭のほかに、古代ゾウの生体復元模型や骨格標本、アジアゾウの子供の骨格標本なども展示していて、壮観です。
ぜひ当園と併せて足をお運びください。
仙台市地下鉄の東西線と南北線を乗り継げば、一日で両方を見て回ることも可能です。
科学館のゾウの骨格標本
科学館の現生のゾウの骨格標本の展示風景。手前がアジアゾウの子供、真ん中がメスのアフリカゾウの「ミミ」、奥がオスのアフリカゾウの「ダン」で、「ダン」の下は潜り抜けが可能。更に奥には、マンモスなどの骨格標本も。


「トシコ」の奥には日本の動物のはく製を展示しているコーナーがありましたが、今回のリニューアルで、更に奥の、より広いスペースに移動しました。
ここでは、当園では現在飼育していない種も観ることができます。

日本の動物の剥製
ニホンカモシカ、シカの仔など、いまでは園内で観られない動物も。この展示は、9月に当園に実習に来てくれた学生さんたちのアイディアを活かしてリニューアル。動物の種類も増え、更に充実しました。

 

「トシコ」の近くに引っ越してきたのは、スマトラトラ。
その上に、同じくスマトラ島などに生息するフクロテナガザルが仲間入りしました。
スマトラトラは、子供のはく製や成体の骨格標本も一緒に展示していますので、幼い時と成長した時の姿の違いを観たり、はく製と骨格を見比べて体のつくりを詳しく観察したりすることができます。
フクロテナガザルは、はく製と骨格標本を並べて展示しており、のどの袋が膨らんだ様子や、木につかまる長い腕の様子などが観察できます。
スマトラトラのディノの剥製
美しい模様を見せてくれるのは、平成16年(2004年)に亡くなったオスの「ディノ」。

スマトラトラの子どもとリップの剥製
手前のケースの上段にいるのは、平成24年(2012年)に生まれて間もなく亡くなった、「バユ」と「ケアヒ」の子供。下段の骨格標本は、平成22年(2010年)に亡くなった雌の「リップ」。

「トシコ」やスマトラトラたちの向かいにあるのは、マダガスカルコーナー。
ここには、ワオキツネザルとクロキツネザルがいます。
クロキツネザルは当園では飼育していないので、ここでしか観ることはできません。

 

更に進むと、巨大なホッキョクグマがいます。何かを狙っているようです。

ホッキョクグマのホクトの剥製
ここにいるのは、平成16年(2004年)に亡くなったオスの「ホクト」。

ホクトの視線の先
「ホクト」の視線の先にいるのは…?

これは、ホッキョクグマの野生での捕食シーンを再現したものです。
自然界であれば、息継ぎのために氷の穴から顔を出したこのアザラシは、ホッキョクグマの餌食となってしまうはずです。
極寒の地で生き抜くための工夫が詰まったホッキョクグマの体を、間近でご覧ください。
ここでは、毛に覆われた後ろ足の裏も観ることができるようになっています。

これだけの標本があると、気に入ったものを触ってみたくなるかもしれませんが、貴重な標本を守るため、触れるのはご遠慮ください。
もちろん、近くでじっくりご覧になるのは大歓迎です。
ここでは動物たちの声も足音も聞こえませんが、園内の生きた動物を観るのとは違う視点や方法で観察することができます。
また、主なものでは、パネルなどで観察のポイントを解説しています。
様々な標本を観て、動物にさらに興味を持ったり、より深く知ろうと思ったりしていただければ、とてもうれしいです。
ビジターセンターでは、今後も展示の充実に取り組んでまいりますので、ご期待ください。

次回は、普段はなかなか目にすることがない、当園秘蔵の標本をご紹介しようと思います。

 

 

ブログ記事一覧ページ

お問い合わせ

仙台市建設局 八木山動物公園 管理課
電話:022-229-0122
ファクス:022-229-3159