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更新日:2023年10月28日
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八木山動物公園スタッフブログ「八木ZOO通信」
マダガスカルを代表する動物園で、長年にわたり当園と友好・協力関係にあるチンバザザ動植物公園は、国内で最大の収蔵品数を誇る博物館としての顔も持っています。
ワニやキツネザル類の飼育施設から南に向かうと、立派な建物が目に飛び込んできます。
ここがアカデミア・マダガスカル博物館で、マダガスカルの動物に関する貴重な標本や、昔の習俗などがわかる民俗学的な資料を展示しています。
なお、チンバザザ動植物公園は年中無休ですが、この博物館は平日のみの開館となっているので、「博物館も観たい!」という方は、平日にお出かけください。
本来は写真撮影禁止なのですが、当園ホームページへの掲載も含めて特別に許可してもらいました。
博物館の外観
建物自体は大きいのですが、展示施設として使われているのは、入り口を入って左手にある一部屋です。
バックヤードも含めた広さは、本市博物館の企画展示室を一回り小さくしたような感じでした。
主な展示品には解説文がついているのですが、すべてフランス語です。
日本人には少しハードルが高いかもしれませんが、スマートフォンの翻訳機能を活用するなどして挑戦してみてはいかがでしょう。
入り口からまっすぐ進むと民俗学的な展示、左に行くと生き物に関する展示があります。
ここでは、左に進んで時計回りに観ていきましょう。
まず、大きな魚の標本が目につきます。
これはいったいなんでしょうか?
特徴的な顔貌と胸鰭。「生きた化石」ともいわれるシーラカンスです。
シーラカンスの生息地としてはインドネシア沖とコモロ諸島沖が有名ですが、マダガスカル沖でも時折捕獲されるとのこと。
この標本はかなり年季が入っているように見えますが、貴重なものと思われます。
その先には、大型恐竜や太古のワニなどの化石を挟んで、大きな鳥と思しき骨格と卵の標本が。
これは、エピオルニスというマダガスカル固有の飛べない鳥のものです。
当園にもいるダチョウよりはるかに大きく、頭頂までの高さが3~3.5メートル、体重は400~500キログラムほどあったそうです。
マダガスカルで発見された恐竜の化石
エピオルニスの骨格標本は、3体。ダチョウのものよりもはるかに大きなタマゴにも注目!
どれだけの大きさか、写真と文字だけではなかなか実感できないかもしれませんが、当園のビジターセンターにエピオルニスの実物大のパネルを展示しておりますので、ぜひこちらで大きさを体感してみてください。
骨格の次は生きたエピオルニスを観てみたくなりますが、残念ながら、マダガスカルに行ってみても、それはもうかないません。
マダガスカルに渡ってきた人間による狩猟や森林の伐採などが原因で、17世紀ころに絶滅してしまったのです。
その隣には、マダガスカルを代表する動物・キツネザル類の骨格標本がずらり。
ひときわ目を引く大きな骨格は、メガラダピスという種のものです。
胴の長さだけで1.5メートルほどに達したそうですが、コアラのような外見と暮らしぶりのおとなしい動物とのこと。
ぜひその姿を見てみたいところですが、残念ながら、エピオルニス同様に、すでに絶滅しています。
メガラダピスについては当園のマダガスカルコーナーでも取り上げており、この博物館に行く前の予習に最適です。
現生のキツネザル類からは想像もつかないほど大きなメガラダピス
後ろを振り返ると、キツネザル類をはじめとした現生の哺乳類や鳥類の剥製が所狭しと並んでいます。
おそらく植民地時代に作られたもので、保存状態も良好。
今から同じレベルの標本を揃えるのは難しいかもしれません。
手前は、マダガスカル訪問記の第4回で紹介した、マダガスカル最大の肉食獣で固有種のフォッサのはく製。
マダガスカルの生態系の頂点に君臨し、キツネザルやイノシシまで食べてしまうフォッサは、住処の森林の減少や、家畜を襲う害獣として駆除の対象とされてしまうこと、野犬との厳しい生存競争などにより、いまや絶滅危惧種に。
その後ろにいるのはコジャコウネコで、こちらは東南アジアからマダガスカルまで幅広く分布。
骨格標本のほうに戻ると、メガラダピスをはるかにしのぐ巨体に出会います。
コビトカバです。
原始的なカバの仲間で、名前のとおりカバに比べると圧倒的に体が小さく、カバのように鼻・目・耳の配置が一直線になっていないことが特徴です。
今はアフリカ大陸のごく一部にのみ生息しており、「世界3大珍獣」のひとつとされていますが、昔はマダガスカルにもいたのです。
マダガスカルに生息していたコビトカバ
生物多様性の宝庫とされるマダガスカルですが、このように博物館で標本を観ることしかできなくなってしまった動物もたくさんいます。
我が国の外務省のホームページによれば、2022年現在で絶滅危惧種が最も多い国がマダガスカルで、その数は3,758種にも及び、2位のエクアドルとは1,000種以上の差がついています。
この博物館での啓発の取組みやチンバザザ動植物公園が進めている保護活動が実り、マダガスカルの貴重な動物たちが守られることを願ってやみません。
骨格標本の掉尾を飾るのは、昔マダガスカルで捕まったというジュゴンとクジラ。
これらは固有種ではなく、「珍しいもの」としての位置づけのようです。
ここから先は民俗学的な展示です。
各地で作られた様々な道具やお守り、地域ごとに特徴がある女性の髪形に関する展示が目を引きます。
昔の日本のものに似通った道具類も展示されており、親近感がわきます。
お守り類
植物を活用して作られた道具類
同館の収蔵品はまだまだあり、展示室の一部を仕切ったバックヤードに保管されています。
しかしながら、バックヤードには研究用の机が一つしかなかったり、標本の保存に必要な防虫剤が十分に入手できなかったりと、財政的な理由で思うような活動ができていないのが現実です。
チンバザザは国立の施設なのですが、マダガスカルは世界最貧国の一つであり、国の経済自体が長年にわたり厳しい状況に置かれているため、慢性的な財政難に悩まされています。
動物園の施設でも、老朽化のため使えなくなっていたり、建物は作ったものの電気を引いてくる予算がなく自然光のみでの作業を強いられたりしているところがありました。
この博物館には、第二次世界大戦やフランスからの独立運動など、幾多の困難を乗り越えて受け継がれてきた、世界的に見ても貴重な資料が残されています。
また、動植物園では、マダガスカルの貴重な動植物が命をつないでいます。
こうした人類の財産をこれからも守っていくために当園として何ができるのか、マダガスカルの方々と一緒に考えていきたいと思います。
バックヤード。このような民俗学的資料のほかに、動物のはく製なども数多く保管。
ここの資料のほとんどは、そのまま棚に置かれたり壁に掛けられたりしており、研究用の机はこの一つだけ。
昆虫類の標本は専用の収蔵庫で大切に保管しているものの、防虫剤が不足していて危機的な状況にあるとのこと。
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