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更新日:2016年9月20日
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阪神・淡路大震災を我々は大変衝撃を受けて見ていました。震災のありようは違いますが、我々も大きな被災を受けて改めて1月17日を迎えると、阪神・淡路大震災の時にもこの寒さの中で避難された方々が、あの後厳しい生活の中で、生活再建を目指していかれたことに、改めて心の痛む思いがします。
そして阪神・淡路大震災で被災された方々が、復旧にあたって、国の制度などで不備な点について声を上げ、運動していただいた上に今回の我々の復旧・復興があると思います。かけがえのないご自分の生活再建の中で十分苦しい中にあって、しっかり後の社会のための発言もされてきたことに、合わせて敬意を表したいと思います。
また、この震災では、当時は生まれていなかった神戸の子どもたち、小学校2、3年生といった低学年の子どもたちが、学校や家庭の中で震災のことを聞いたりする中で、いち早く被災地に、仙台・宮城に対して励ましの声を寄せてくださいました。震災を経験した方だけが当事者ではなくて、子どもたちにその経験を伝えていくこともいかに大切かということを改めて学ばせてもらいました。
今回の1月17日を、我々も同じ被災者として迎えることには、これまで一国民として1月17日を悼んできたのとはまた違った深い思いを今日は感じています。
あの当時、個人の皆さんの生活再建に対して、制度としてバックアップするものはなかったと思いますが、生活再建は社会としての責任でバックアップしていく必要があるだろうということで、生活再建支援法という法律が後にできて、支援金が被災者に出るようになりました。十分とは言えないかもしれませんが、その意味はとても大きい。後の社会に対してしっかりとした復興・復旧の足がかりを法的に整備するもとになったことは、阪神の方々の大きなお力、ご功績、果たした役割だと思います。
また、阪神・淡路の時は、応急仮設住宅の間取りはたぶん家族数によっていろいろなタイプはなくて、一律にどの家族も機械的にこの大きさという形で割り振られていたと思います。今回は3人家族ならばこのタイプ、4人以上であればこのタイプというふうに、多少実態に合わせて対応することを可能にする仕組みになったとか、いくつか制度として前進した部分があったと思います。
今後も課題として残る部分としては、今回みなし応急仮設住宅ではコミュニティーを維持していく面で、難しい部分があるという課題がでてきています。阪神・淡路の時から提起された孤独死を出さないこととか、コミュニティーをしっかり維持して再建に繋げていくことについては、我々もまだまだ試行錯誤の途上だと感じています。
ただそれは阪神・淡路の時からの大きな課題ですので、何とか我々のところでできる工夫はして、一歩でも二歩でも近づけるようコミュニティーを大切にした復興に我々もチャレンジしていきたいと思います。
今回の被災の中で、非常に早い時期から教えていただいたことの一つには、がれきの処理があります。発災から非常に早い時期に神戸からいらっしゃった方々が、阪神・淡路大震災の時のがれき処理の仕組みや、がれき処理にあたって検討しなければならない法律について記した大きな行政の記録冊子を持ってきてくださって、これが絶対必要になるでしょうから、参考にしてくださいとおっしゃってくださったことがありました。
がれきの処理について統一的なマニュアルと言っていいようなものをご提供いただいたことは、我々にとっては大変大きな支援でありました。
また、阪神・淡路大震災の経験があった故に、備蓄物資についてもきめ細かい対応をされていて、我々の備蓄品の中にはなかったのですが、誤嚥性肺炎などを防ぐためには、歯磨きが大事で、そのためには歯ブラシがなくてはいけないということで、歯ブラシも大量に送っていただきました。
そういう、きめ細かい支援を発災当初の混乱した中で、こちらの要求に従ってというより、こういうことは役に立つはずだと、神戸・京都や阪神の方からあちらで独自に必要と判断したものをどんどん届けていただいたのは、とてもありがたいことでした。
これからに向けては、阪神・淡路大震災の時もいろいろなボランティアの方々が、応急仮設住宅の方々のコミュニケーション作りに活動していただきましたが、そういったノウハウを生かしていきたいと思います。例えば、これから復興公営住宅を作っていきますが、復興公営住宅もいろいろな地域の方がお入りになると、当初コミュニティーが作りにくいという話が阪神・淡路大震災の時にあったと聞いていますので、そういったところにどういった工夫があるのかということも我々も考えていかなければなりません。
そしてお一人お一人の皆さんが生活的に自立していく時に、職を得るために、就業支援でどのような講座やカウンセリング、相談が必要であったかなど、生活再建の実務的な事業をどのように展開されたかといったことは、我々にとって役に立つと思いますので、さらに具体的にお尋ねしていかなければならない部分だろうと思います。
この件については、経済産業省や砕石の組合などで、流通ルートについて詳細を把握する作業を続けていただいていると伺っています。仙台市として独自に流通ルートを、県を越えて調査することは、なかなか困難ですので、今は、国や業界での調査の情報をしっかり把握することに努めているところです。
東西線の開業は平成27年度で、震災によって工事に若干の遅れが出ていますが、なるべく開業が大きく遅れないように、できれば遅れを回復するように本部に努めてもらっているところです。
営業収支については、ご承知のとおり昨年行うはずだった中間見直しを、震災の影響で1年延ばしていただいています。国の方でもそれは了解していまして、近々改めて現時点における地下鉄東西線の乗客、乗降数見込みなどを出して、それらに基づいた採算・運用の検討を行って国に出す段階になってまいります。
今回の震災で、改めて東部のまちづくりが喫緊の課題になってきています。集団移転もありますし、いろいろな形で東部のまちづくりが加速していく状況にございます。そうした中で、安定的な鉄軌道の運用はまちづくりに向けても大変力強いインフラであることは間違いないところです。
地下鉄東西線は建設面を含めて、コンパクトに効率性を重視して建設していますが、さらに開業前にしっかりとしたまちづくりを行うことによって、開業時点からなるべく多い乗客数で運営に入るように努力したいと思っています。どのぐらいの年数で、赤字から単年度黒字になるかは、具体的な試算をしないと話ができない段階ですが、私としては東部のまちづくりにとって欠かせない地下鉄東西線の運営が、しっかりしたものになるように努めていきたいと考えています。
東西線は空港アクセス鉄道とはまた性格の違うものだと思います。都市の南北線に対して、東西の基軸を作ってそこに人口集積を図りながら、片方には大学があり、片方にはニュータウンがあり、そして沿線の卸町や六丁の目など、これまでどちらかというと人口集積の少なかった部分にも、定住人口を貼り付けつつ運営していきたいというのが地下鉄東西線です。まちづくりをしっかりしていけば、空港アクセス鉄道とは違った性質の地下鉄として運用していけると考えています。
地下鉄東西線の議論は20年くらい前からずっと行われてきました。特別委員会などでいろいろご議論をいただきながら、地下鉄東西線の建設経費が仙台市財政を圧迫しないように積み立てを行いながらやってきました。
そもそも仙台市の中で南北地区沿いの面的な開発はある程度やっていた中で、仙台市として新しい街の発展の基軸を東西に持つ時に、鉄軌道のインフラがなければ、それは非常に難しいことだと議会も含めご理解をいただいておりました。
鉄軌道を中心としたまちづくりを進める中で、例えば八木山動物公園があり、大学も青葉山キャンパスがありというのは、地下鉄東西線の採算のために、というよりは、地下鉄東西線を基軸として発展的なまちづくりをするために、さまざまなインフラがあることを中心に考えていくことが、コンパクトかつ流動性の高い街をつくることになると思います。
地下鉄東西線ありきで、そこに張り付けるのではなく、まちづくりに鉄軌道の基軸があって、そこにいろいろな機能が集積していくことによって、まちづくりが合理的に推進されるという考え方です。例えば大学があったり、動物園があったり、新しい土地区画整理事業があったり、卸町のビジネスやコンテンツ産業の一体化があったり、そういったいろいろな要素が今沿線に集積しつつあり、それに向けて我々も努力していくことが必要ではないかと思います。
それは集客施設が地下鉄沿線にあることは、一つの乗客増の大きな要素ですし、動物園にとってもパンダという貴重な動物が来ることは、大きな集客要素だと思います。結果として地下鉄東西線の乗客数の増にも寄与してくれると思っています。
復興作業が加速していく中で、新しく予算措置もされましたので、これから被災県全域でかなりの規模の公共事業が起こってくることは間違いのないところです。これらを受けて、建設業や土木業、設計・コンサルタントの業界などでは、全国的な会社は特に東北支社などで、この3県の職員を増強していると伺っています。
また、国もさまざまな事業を直轄でやるために、東北の整備局や事務所の増員を行っていると聞いております。
仙台が今相当な人口集積を生みつつあるということは、単純に被災された方々が、県内や隣県から流入してきているものに、そうした方々の拠点としてプラスアルファされた結果の人口増であろうと思っています。
それらについて、一部週刊誌の見出しなどで「バブル的な」という表現がされているのを拝見しますが、仙台市が復興の拠点をしっかり担わなくてはいけないということは、発災当時からの私自身の考えです。まだまだ沿岸部の道路事情が十分ではなく、特に沿岸部の宿泊地とかアパートも十分でなく現地に留まれない状況の中で、仙台市が拠点性を担保して復興の土台となることは必要なことだと考えていますので、我々もしっかりと取り組んでいきたいと思います。
ただ、仙台で需要が非常に高いとか、飲食業界が前年比何パーセント売り上げ増であるとか、いろいろな話がありますが、復興需要だけが、神風のように吹いてきて、それを我々が受身的に受けているだけで、復興が成り立つわけではないことは、経済界の方も含め我々も十分心していかなければならないことだと思います。
戦っていける製造業を持たなくてはいけないとか、消費者に選択されるような商売、お店、サービスの提供をしていかなくてはいけないとか、この震災前から我々が課題だと思っていたことに変わりはありません。
いくら一時的に総需要が増えて、選択がなくなってあまねく潤うかのように見えても、それは極めて短期間のものであろうことは、誰のコメントを見ても出ています。
我々としては、東北の人口が減少していく中で、仙台の強さを作っていくこれまでの路線について、復興の中でも決して道を見失うことなく、商店街や国分町の皆さまとも一緒に、しっかりとやっていかなければなりません。
復興需要がいつか終わる時に、強い仙台、強い被災地の産業になっていなくてはいけないということについて、十分心してやるべきことだと、今、むしろ自戒を含めて思っています。
仙台市では、どうしても新しい大規模な製造工場というわけにはいきませんので、今お話のあったコールセンターの誘致を含め、オフィスを使っていくような会社の誘致ということになると思います。
それは変わらずにやっていこうと思っています。
100人単位であったり、小規模なものであったりしますが、積み重ねていくことで、一定の雇用の場を確保できると思っています。
沿岸部も含め、土木・建設などハード系の分野では一定の求人があって、国でも建設業界に対して女性の雇用に配慮するように話しているようですが、被災したために自分も働きに出たいと思っている女性の皆さんにとって、現実にはなかなか難しい部分があるようです。
コールセンターなどは女性の力を発揮できる部分ですので、そういうことは努力をしていきたいと思います。
併せて、これは前々から仙台市のひとつの大きなポリシーとして、クリエイティブなものと学とを連携させる産学の連携、あるいは研究機能や新しい実験機能の誘致などでの大学との連携を強化していきたいと思っていましたので、今回の震災を踏まえて、新しい防災の学であるとか、新しいエネルギーの実験であるとか、そういったものについては、仙台の都市の強みを生かして、伸ばしていくように我々として努力したいと思います。
お話が具体になればなるほど、いろいろな制度のこともありますし、思いとしては同じでも、それぞれの個人の経済状況の違いもありますので、仙台市から制度をご説明しているだけでは、皆さんの中で十分な合意を図れない場面も、事態が進むことによって出てくることがあると思います。
そうした場合に、市とは違う、そして住民の皆さまよりはもう少し専門的な知見や経験をお持ちの方が、ネーミングがコーディネーターとなるのか、コンサルタントとなるのかは分かりませんが、住民の方と我々行政の間に立って、意思疎通をするとか、住民の方が知りたい情報をさらに分かりやすく提供するとか、そういった機能を持つ方がいらっしゃることは、事態を前に進める上で有用なことだろうと思っています。
そうした方を住民の側でキープされるのか、それとも我々の側でお願いしていくのか、契約の仕組みはまだ考えていませんが、いずれそういう間に立って働いていただく方は、何らかの形で必要だろうとは思っています。
住民の方々から、今いろいろお話を伺っており、アンケートでの意向把握も2月初めに向けて進めているところですので、予算措置も考えますと、新年度からというのが一番早くて、妥当なところかとは思っています。
例えば、仙台市はこう言っているけれども自分たちとして税金のことが心配なので税理士の話を聞きたいとか、契約の法律的な効力について本当に仙台市の言っている通りなのか弁護士に聞きたいとか、ご懸念があれば、それらについて臨時的に対応させていただくことは、3月まででも十分可能であろうと思います。
意思確認書を出していただきますが、それを未来永劫、途中で変えてはいけないと、役所が強制するものでもありません。
区画整理等の中で住宅を再建していくには、年単位の期間がかかりますので、その中で、そうしたサポートをする人がいらっしゃってよいのではないかと思っています。
仙台市長 奥山 恵美子
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