若林区
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更新日:2016年11月15日
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広瀬川には、四季を通しさまざまな生き物たちが生息しています。植物、昆虫、魚、小動物…そのどれもが種類が豊富で、川に近づき目を凝らせばたくさんの生き物たちが互いにかかわり合いながら暮らしているのを確かめることができるでしょう。
仙台の気候特性、地形的な特色、そして水質の良さが、そうした動植物相の豊かさをもたらしているのです。
大都市の河川としては、全国的にみても有数の自然豊かな川といえます。
清流とよばれたくさんの生き物を育む広瀬川ですが、昭和30年代から40年代にかけて水質汚染が進んだことがあります。都市化が進行し人口が増加したのにともない、生活雑排水が川に流れ込んだのでした。
昭和49年(1974)、仙台市は「広瀬川の清流を守る条例」を制定しました。一本の河川を対象とした条例としては、全国で初めてのものでした。この条例の画期的なところは、水質と景観の二つの面から川の環境の保全を図ろうとしたところです。環境保全区域や環境保全区域を定め、区域内での水質管理基準、許容付加量、排出規制基準を設定していますが、いずれも出す側からの都合ではなく、川の立場に立ったきめ細かい基準値が設けられているのもすぐれている点です。
条例の制定と歩調を合わせるように進められた下水道整備の効果もあって、広瀬川には美しい流れがもどってきました。いま、条例前文を読むと、清流への思いを一つに行動を起こした当時の人々の熱意がひしひしと伝わってきます。
広瀬川には、たくさんの種類の植物が成育しています。というのも、仙台は、ちょうど暖温帯と冷温帯の中間に位置しているから。両方の気候で成育する植物が見られるのです。加えて、中流域に市街地がつくられているため、崖面にも豊かな植物群を認めることができます。
1961年(昭和36)、上流に大倉ダムに建設されてからは大雨のときでも川の水量が一定に保たれるようになり、しだいに中洲が発達してきました。しかし、宮沢橋付近などに大きな中洲が発達し、ヤナギなどが大きく育ったことが洪水時の流下阻害になると危惧され、宮城県では広瀬川の治水能力の向上を図るため、河川環境に配慮しながら中州・寄州の除去や樹木管理伐採を段階的に実施しています。
また、近年は市街地を流れる川の常として、帰化植物が数多く進入し繁茂するようになっています。
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その他
ケンポナシ、ヒメノガリヤスなど
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その他
シロヤナギ、フキノトウなど
広瀬川流域では120種を越える野鳥が観察されています。
大都市を流れる川でこれだけの野鳥が認められるのはめずらしいことで、その背景には、ちょうどこのあたりが渡り鳥のコースになっていること、地形が変化に富みさまざまな環境に生息する鳥が集まっていることが上げられます。
野鳥には、四季を通して里や山に棲息する「留鳥」、春から初夏にかけて飛来する「夏鳥」、秋から初冬に飛来する「冬鳥」の3種があります。留鳥は季節によって短距離の移動をすることもありますが、ほぼ1年中目にすることができます。四季折々、鳥たちの生活を観察するのは楽しいものです。
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その他
センダイムシクイ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ヤマセミ、イソシギなど
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その他
オオヨシキリ(ウグイスの仲間。スズメより大きい)、カッコウ(仙台市の市鳥。モズやオオヨシキリの巣に託卵する)、バン(大きさはハト位、体は黒い。くちばしは黄色と赤で目立つ)など。
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その他
マガモ、コガモ(冬鳥として飛来)など
写真撮影、協力
メディア工房の菊地重夫さん(毎日の広瀬川の様子を知ることができるページ「きょうの広瀬川」の管理人)ほか
川に生息している魚は、その川の環境すべてを私たちに端的に伝えてくれる生き物です。水質のみならず、護岸の環境や、瀬や淵の変化によっても、魚種やその数が変わるからです。逆にいえば、指標となる魚を決め、その魚種が生息しやすい環境を整えていくこともできます。
仙台市では中流全域でアユが生息できるよう、水質基準をBOD3ppmに定めています。
また、時代によって、魚種も変化してきました。たとえば、1970年代の調査では中・下流域で目立ったのは「オイカワ」でしたが、現在はオイカワよりもっときれいな水質を好む「ウグイ」が優占種となっています。水質が改善されたことがわかります。
広瀬川の魚類の調査で最も新しいものは、1991年から3年をかけて行われたものですが(『広瀬川流域の自然環境』仙台市 1994)、このときは上流から名取川との合流点を経て河口に至るまでの間で、72種類の魚が確認されました。過去の調査結果と合計すると、魚種は111種類にも上り、この魚種の豊富さは東北で随一、全国的にみても屈指のものです。理由としては、自然河岸が残り魚の繁殖場所や稚魚の生息場所があること、都市河川でありながら水質がよいこと、河口の水質環境もよく川に入り込む海魚が多いことなどが上げられます。
しかし、そうした中にあっても、人為的な改変があった水域では在来種が減少し、他地域からもたらされた移植種が定着している傾向がみられます。
愛宕橋から河口まで、若林区内を流れる広瀬川には下流域の特徴を持っています。特に名取川との合流点から河口までは満潮時には海水が流れ込むため、海の魚も認められます。
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その他
ブラックバス(サンフィッシュ科 移植種。他の魚やその卵を乱食し生態系を乱すことから問題視されている。名取川広瀬川の合流点に出現した)など。
上流から下流まで、その微妙な環境を選び取りながら生活する多様な虫たちも、広瀬川の大切な住人です。昆虫も魚と同様、1991年から3年をかけて行われた調査が最も新しいものですが、水生昆虫をのぞいては下流域が調査対象となりませんでした。ここでは、流域全体でみられる昆虫について紹介します。
水の中に生息している虫たちです。カゲロウ、カワゲラ、ユスリカ、トンボなどは長い幼虫時代を川の中で過ごし、やがて大きくなるとそのほとんどは皮を脱ぎ羽根を持つ成虫となります。
また、実際に川で観察すると、同じカゲロウの仲間でも、自由に泳ぎ回るのが得意なカゲロウもあれば、石にへばりついて生活するカゲロウ、水中に積み重なった落ち葉の中で生活するカゲロウなどいろいろな種類がいることがわかります。変化に富んだ川の中のいろいろな場所で、上手にすみわけを行っているのです。
91年から3年をかけて行われた調査では、流域全体で131種の水生生物が確認されました。
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このほか、トンボ、ブユ、ユスリカ、ガガンボ、ドロムシの幼虫などが、水の中に生息しています。
川原もまた、昆虫たちにとっては、都市の中に残された貴重な住み処です。特に植物の多い場所は、チョウやトンボ、甲虫、そしてコオロギなど秋に鳴く虫たちがたくさん生活しています。
こうした住み処を大切に守ることによって、虫たちから季節の移り変わりを教えてもらうこともできるのです。
1991年から3年をかけて行われた調査では、2,438種の昆虫が確認されました。ガが1,196種、甲虫が904種、カメムシが93種、チョウが92種、トンボが52種、バッタが45種などです。
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シジミチョウ、セセリチョウなど
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その他
マユタテアカネ(ノシトンボ)など
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その他
ナガカメムシ、オオヨコバイなど
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カマドウマ、キリギリスなど
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その他
ミズスマシ(水生昆虫)など
このほか、貝類やエビやカニなどの甲殻類、両生類や爬虫類、そして哺乳類の動物たちが広瀬川を住み処としています。
中でも清流の指標生物として忘れてならないのがカジカガエルでしょう。広瀬川では、昭和40年頃の最も水質の悪化した時期に、市街地の流れからは姿を消しましたが、清流が戻る中カジカガエルの増殖がはかられ、再びその姿を見ることができるようになりました。カジカガエルはもともと渓流に生息するカエルで、大都市河川で見られるのは大変珍しいのです。
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その他
ヌカエビなど
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その他
モノアライガイ(巻き貝。川沿いの沼や水田に多い)など
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ネズミの仲間
コウモリの仲間
このほか、上流域では、二ホンカモシカ、二ホンツキノワグマなどの大型ほ乳類も出現しています。
このページは、仙台開府400年を記念して実施した「若林区の魅力発見事業」で平成14年度に製作しました。
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