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ホーム > ブログ・SNS > 八木山動物公園スタッフブログ「八木山ZOO通信」 > スタッフブログ2025 > 園長ブログ 開園60周年にあたって(2025年10月30日)
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更新日:2025年10月30日
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八木山動物公園スタッフブログ「八木ZOO通信」
当園の開園記念日は10月15日で、この日に近い週末には開園記念日のイベントを開催しています(なお、開園記念イベントを行う日は、中学生以下の方は誰でも無料で入園できます。)。
開園60周年となる今年のイベントは10月12日に実施し、午前中は雨模様だったにもかかわらず、1,700人を超える方々が足を運んでくださいました。
今回は、9月に記念講演会を開催しセレモニー的なことを行っておりましたので、50周年の時のような記念式典は行わず、開園後のできるだけ早い時間からイベントを楽しんでもらえるようにしました。
午前9時30分から開催した、当園の現役職員の中で一番よく当園の歴史を知っているベテラン飼育員2名のトークは、個人的に大変楽しみにしていたイベントでした。
幸いにもたくさんの方がお越しになり、懐かしい話や、今だからこそ明かせる話で盛り上がっていました。
私も初めて聞く話が多く、大変勉強になりました。

当園の誇るベテラン飼育員のトークは大好評
また、リニューアル工事のため空き家となっていることを逆手にとった「カバのプールに入ってみよう」、飼育員を探してクイズに挑戦し、正解するとホッキョクグマが遊んだおもちゃ(ポリタンクや湯たんぽ)のかけらを利用したグッズをプレゼントする「飼育員を探してクイズに答えて記念品をゲットしよう!」も大好評でした。

園職員だけが立ち入れる高台から主のいないカバプールを望んだところ。右手はやはり主のいないクロサイの放飼場。
当日は、人数制限はあるものの、カバプールの中を自由に探検して、飼育員の説明を聞くことができました。
これらはいずれも、一番間近で動物や来園者の方々に接している飼育員が、60周年に向けてアイディアを出したものです。
当園では、月に1回「行事委員会」を開催し、今後実施するイベントの企画立案を行っております。
これからも、みんなで知恵を絞って、動物や環境問題について楽しみながら学んだり、気付きを得たりできるような企画を考えてまいりますので、ご期待ください。
ここで、改めて、当園(と本市における動物園)の歴史を振り返ってみましょう。(これまでのブログの内容と一部重複がありますが、ご容赦ください。)
仙台市の動物園の歴史は、遠く昭和11年(1936年)にまで遡ります。
この年、広瀬川河畔の評定河原の地に「仙台市動物園」が開園しました。
東北では初、国内では11番目の動物園でした。
「浅草花やしき」の動物園の閉園に伴いやってきた動物や、市民から寄付された動物などを展示して人気を集めました。
当時の記録によると、ヒグマやタンチョウ、ツキノワグマなどの国内の動物だけでなく、インドゾウ、ホッキョクグマ、ライオン、キツネザル、カンガルー、トラ、フタコブラクダなど、いまでも人気のある、海外の様々な動物も飼育していたようです。
同年4月1日の開園日は、正午に入園開始とする予定でしたが、午前10時ころから多くの観衆が詰めかけたため、予定を繰り上げて入園を許したそうで、約8千名の方々が来られたと記録されています。
しかしながら、戦局の悪化により昭和19年に閉鎖され、翌年の仙台空襲で被災し廃止されました。

「仙台市動物園」入り口の様子と思われる古写真
その後しばらくの間、市内には動物園がない状態が続きましたが、昭和32年(1957年)10月25日、三居沢(現在三居沢交通公園のある場所)に子供動物園として復活しました。
やがて、インドゾウなどの大型の動物が増えるなどして手狭となり、子供たちから仙台市に対し、新しい動物園を作ってほしいとの要望が寄せられるようになりました。
こうした動きを受け、昭和40年(1965年)10月15日に、八木山動物公園が開園したのです。

三居沢にあった子供動物園の様子。いま交通公園がある場所に、ライオンやゾウがいたんです。
当園は、戦前に日米野球親善試合が行われベーブ・ルースがホームランを放った八木山球場の跡地を含む現在の場所に、「できるだけ自然を残す」「無柵放養式(動物と観客の間に檻や柵がなく、放飼場にいる動物を直接見ることができる展示方式)を採用する」ことを大きな方針として整備されました。
開園時に完成していたのはいまの東園の一部(整備予定地の3分の1程度)で、サル山の完成は昭和42年(1967年)、アフリカ園(西園)の完成は昭和44年(1969年)でした。
昭和53年(1978年。宮城県沖地震のあった年です。)には虫類館とゴリラ舎が、昭和62年(1987年)にはレッサーパンダ舎等が完成し、園内の整備は一段落しました。

開園の日に園内でチンパンジー等を抱く島野武市長(当時)ら。
チンパンジーが服を着ていたり、動物の仔を展示場外で人間が抱いたりと、動物の扱い方が現在とは大きく異なっていたことがうかがえます。
先述のとおり、当園は、柵や檻で動物と人とをできるだけ区切らないような作りとなっているのが特徴でしたが、平成に入ってからは、この展示方法をさらに進化させて、動物が野生で生息する環境を再現し、動物の自然な行動を観察できるようにする「環境生態展示」の導入を図りました。
平成11年(1999年)にアフリカ園の、平成14年(2002年)には猛獣舎のリニューアルを行い、動物たちの生き生きとした様子を間近で観られるようになっています。
平成22年(2010年)には、地下鉄東西線の開業を見据え、将来的にメインゲートとなる西門側に、野生動物とその生息環境に興味を持ってもらうことを目指し、研修室や、動物の剥製や骨格標本などの展示室などを備えたビジターセンターを整備しました。
そして、今から10年前の平成27年(2015年)に地下鉄東西線が開業し、市中心部からのアクセスが飛躍的に改善しました(今年は、当園が開園60周年、地下鉄東西線が開業10周年と、ダブルで記念の年なのです。)。
これにより、当園は、より一層皆様に身近な動物園となったと思います。
平成29年(2017年)には、動物との触れ合いを通じて命の大切さ・すばらしさを感じてもらったり、動物たちの生態や能力を間近で観察できたりする「ふれあいの丘」を整備し、平成のリニューアルは終了しました。
令和に入ってからは、様々な施設・設備の老朽化対策が必要となったこと、今となっては時代遅れとなってしまった展示施設(檻型の施設や、動物を見下ろす施設など)が残っているなど、園として更なる魅力アップを図る必要があること等を踏まえ、大規模なリニューアルを行うこととしました。
現在、令和3年(2021年)に策定した「施設長寿命化再整備計画」に基づいて施設の整備を進めており、令和6年(2024年)には、動物の一時的な飼育場所として活用する裏飼施設が完成しています。
今後は、は虫類館・ゴリラ舎及びサイ・カバの獣舎があったところに総合獣舎を、ガン生態園のあった場所にライオン舎を整備する予定で、これに先立ち、は虫類館が令和6年11月に閉館しました(いま、は虫類たちは、裏飼施設で暮らしています。)。
現在のところ、これらの施設と現在のアフリカ園を含んだエリアの整備は、令和10年度(2028年度)まで続く予定です。
また、すべてのリニューアルが終了するのは、令和19年度(2037年度)を計画しています。

現在は関係者だけが通行できるサイ・カバ舎の上の通路から見た、開園記念日である10月15日の、は虫類館周辺の状況。
ガン生態園のあった場所は既に更地となっており、は虫類館の解体も本格化。

は虫類館の10月27日の状況。解体はさらに進み、館中にあった太い柱の撤去も秒読みに。
当園は、そのルーツである仙台市動物園まで含めると、閉鎖・閉園、宮城県沖地震や東日本大震災などによる被災、コロナ禍による臨時閉園など、様々な困難に直面してきました。
一度閉園した動物園が十数年の時を経て復活し、更には移転・拡大にまで至り、日本の歴史に残るような大災害まで乗り越えることができたのは、戦前から動物への興味関心が高かった市民の皆様の力強い後押しと、地域の一員として受け入れてくださった八木山地区の皆さんのご理解・ご協力、更には、全国から寄せられてきた物心両面での励ましのおかげです。
改めて御礼申し上げます。
この間、動物園の役割も大きく変わってきました。
いま、動物園には、「種の保存」「調査研究」「教育・環境教育」「レクリエーション」の4つの役割があるとされており、これらをバランスよく果たしていくことが求められるようになっています。
当園が開園したころは、動物園といえば、一般的には、珍しい動物を見て楽しむレクリエーションの場、家族で出かける憩いの場だという意識が強かったと思いますが、改めて開園式典での市長のあいさつを確認してみると、「野生の動物が絶えないよう保護、増殖したりする生きた教材の場です。」と、「種の保存」と「教育」の役割があることにはっきりと触れており、その先見性に驚かされます。
実際に、当園は早くから「種の保存」に取り組み、インドジャッカルやアフリカスイギュウ、カナダガン、シジュウカラガンなどの繁殖に、国内で初めて成功しています。
仙台ともゆかりが深いシジュウカラガンについては、国内への飛来数が激減したことを受け、昭和55年(1980年)から、「日本雁を保護する会」と共同で、羽数の回復に取り組みました。
千島列島で13回に及び放鳥するなどした結果、現在は、1万羽ほどのシジュウカラガンが県内に戻ってきています。
近年は国外にも目を向け、平成20年(2008年)にマダガスカル共和国チンバザザ動植物公園と協力協定を締結し、危機に瀕している同国の生物多様性の保全に取り組んできました。
これからも、こうした良き伝統を守り、なによりも「動物ファースト」を基本としながら、当園に期待されている役割を果たしていきたいと思います。
変化や再生、成長の象徴とされるヘビ年に、三居沢の子供動物園から、いわば「生まれ変わって」誕生した当園は、還暦を迎えた今年も、新たな変化・再生の真っただ中におります。
いま進めているリニューアルが完了するのは開園70周年よりも先のことであり、まだまだ長い道のりではありますが、当園の基本理念である「動物を身近に感じ、楽しみ、学べる杜の都の魅力ある動物園」及び今年5月に公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)が策定した「JAZA将来構想2025」(公益社団法人日本動物園水族館協会サイトへリンク)において提示された「地球と生きもののより良い未来のためにともに行動する動物園」の実現に向け、引き続き様々な取組みを進めてまいります。
当園が新しい歴史を積み重ね、未来の子供たちの笑顔があふれる場所となれるよう、引き続きご理解とご支援・ご声援をお願い申し上げます。


開園記念日を挟んだ約1週間、密かにビジターセンターに設置していたメッセージボード。
こうした台紙6枚にわたり、当園の思い出や応援のメッセージをいただきました。
ありがとうございました!
お問い合わせ
仙台市建設局 八木山動物公園 管理課
電話:022-229-0122
ファクス:022-229-3159