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更新日:2016年9月20日

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平成22年度施政方針要旨

平成二十二年第一回定例会の開会に当たり、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べます。

私はこれまで、市民の皆さまと思いを共有し、現場の知恵を大切にしていくことが私の市長としての原点であるとの認識に立ち、市民の皆さまと積極的に対話を重ねるとともに、市民の代表である議会における議論を真摯に受け止め、仙台市長としての職務にまい進してまいりました。改めて市長としての責務の重大さ、そして皆さまの期待の大きさを痛感している次第でございます。

新年度は、百万市民の負託を受け、市民の皆さまにお約束したことを本格的に実施するスタートの時であり、長い歴史を有する仙台市の新たな発展に向けた転換の年とすべく、市政運営に取り組む強い決意を新たにしているところでございます。

私は、新年度を「行動する市民力」発動の元年にしたいと考えております。「行動する市民力」をまちづくりのエネルギーへと変え、市民の皆さまとともに社会の課題・潮流に先駆的に向き合い、市民の皆さまの暮らしの真の豊かさを実現するための歩みを始めてまいります。

さて、わが国経済は、一部に持ち直しの動きがあるとされているものの、長く続く低迷をいまだ脱し切れておらず、なかでも地域経済は新卒者の就職内定状況に象徴されるように先行きを見出しがたい極めて厳しい状況にあり、市民生活にも深刻な影響が及んでいます。

また、地域は自らの責任と判断でそれぞれの地域の実情に合った行政サービスを実施するという地域主権の仕組みづくりが進められており、各地方自治体は地域の未来をどのように切り拓いていくのかが問われています。

一方、私たちの仙台、東北におきましては、全国的には稀有とも言える未来への躍動の機運が芽生え始めております。まず、本年十二月には東北新幹線の青森延伸により、東北の特色ある資源や人、ビジネスなどのネットワークが強化され、この地域が持つ多様な可能性が現実のものとなる道が開けてまいります。また、仙台圏・東北における自動車や半導体関連産業の相次ぐ立地は、東北経済にとってまさに新たな時代を画する大きな転機であります。本市といたしましても、仙台が有する優れた頭脳や高度な都市機能を生かしていくなど、東北全体の飛躍につながるような積極的な役割を果たしていくことが求められていると強く感じております。

折しも、新年度は新しい総合計画を策定する年であります。わが国は、人口減少社会の到来や高齢化の急速な進展など、社会構造の大きな転換期に当たっており、課題解決のための正しい答えが用意されているものではございません。計画の策定に当たりましては、市民・議会の皆さまとともにそれらの課題を乗り越えていく仙台独自の登り道を探り当ててまいりたいと考えております。そのため、市民の皆さまの幅広いご意見を伺い、十分に対話を深めながら、さらに市議会でのご議論も踏まえまして、「仙台総ぐるみ」で市民一人ひとりの思いが刻まれた将来へと続いていく確かな都市戦略を創り上げてまいる所存でございます。

さらに、新年度にはAPECの高級実務者会合や第四回仙台国際音楽コンクールが開催されます。この機会にこそ、仙台、そして東北の魅力と力量とを広く世界に向けて発信していく必要があります。このようなことから新年度は、仙台、東北が一体となって未来の開拓に取りかかるべき大変チャレンジングな年であると私は感じております。

このような大きな挑戦を目前にし、私たちがよって立つべき力は仙台の外にあるのではなく、他ならぬこの百万市民の皆さまにこそ内在していると私は信じております。

仙台は稀にみる「人材都市」であり、大学等の知的資源に加え、ビジネスや文化芸術などの分野において優れた頭脳が集積しています。こうした創造的な人材が生み出す新しい価値と東北の多様な可能性を結び付けていくことにより東北全体を世界に押し出していく、仙台は先頭となってそのような役割を果たしていく必要があるのではないでしょうか。

また、仙台市民のごみ減量・リサイクル活動等における足腰の強い行動力、市民主体の画期的なイベントを生み出す企画力には特筆すべきものがあります。加えて、NPOなどの盛んな市民公益活動、政令指定都市の中でトップクラスにある町内会の加入率など、本市の比類のない特質をさらに発展させながら、こうした仙台市民の力を新しい課題解決や都市の魅力の創出につなげてまいりたいと思います。

一方で、人口減少や高齢化、経済の低成長などが同時進行し、都市の拡大を前提とした行政サービスの提供や社会基盤の整備は既に不可能となろうとしています。現在が都市経営の転換期にあることは否定できません。そうした中におきまして、希薄化した地域コミュニティの再生や限りある社会資源の最適な活用といった問題において、市民の皆さまの主体的な参画がぜひとも必要であり、ここにおきまして、市民の皆さまの賢明な選択、課題解決のために粘り強く行動する力が極めて重要な役割を果たすことになるものと確信いたしております。

以上の考えに基づき、新年度は「行動する市民力」を駆動させ、次の市政の課題に重点的に取り組みながら、仙台、そして市民生活の真の豊かさを実現するまちづくりに取り組んでまいります。

まず、「人と人との結び合いによって支えられる地域づくり」を進めてまいります。私は、市民の皆さまの暮らしの安心を確かなものにするのは、人と人との支え合いであると考えております。しかし現在、人のつながりが希薄化するとともに、地域ごとにさまざまな課題が山積しています。画一的ではない個々の地域の特性に応じたきめ細かな地域づくりが必要であります。そのためには、何よりも地域を最もご存知の一人ひとりの市民の皆さまがつながり合い、知恵と実行力の輪で身近な課題の解決に取り組んでいただくことが重要でございます。人材の育成などにより、地域づくり活動を効果的に支援するとともに、その拠点である区役所や市民センターの機能を強化し、住民と行政とをつなぎ共に地域づくりを進めていく新たな体制を整えてまいります。

次に、「未来を担う子どもと若者の希望づくり」を進めてまいります。将来への可能性を開く最大の資産である人材を育むことが極めて重要であります。まちを挙げて子どもたちのたくましい成長と若い世代の活躍を全力で応援したいと考えています。とりわけ、認可保育所の前倒し整備やせんだい保育室の支援などにより、入所枠を大幅に拡充し、保育所待機児童の早期解消を目指すとともに、せんだい保育室等におきまして三歳未満児の保護者の負担軽減を図り、若い世代が子どもを安心して生み育てることのできる環境づくりを進めてまいります。また、子どもたちが感性を磨き、人生をより深く生きていけるよう、読書に親しむための取り組みを充実させてまいります。さらに、未就職の高校新卒者の就労を支援するほか、高校生の経済的な支援や学生のインターンシップの推進などにより、若者が将来に希望を持てるような施策の展開も積極的に図ってまいります。

さらに、「仙台の知恵を結集した地域経済の新たな活力の創造」を進めてまいります。人材都市の強みを最大限に生かし、本市の産業や街に新たな活力を注ぎ込みたいと考えております。まず、大規模製造業の立地を好機と捉え、本市の頭脳集積を生かして地域企業のイノベーションを促進し、ビジネスチャンスの拡大を図ってまいります。中心部商店街につきましては、商店街やNPOなどの優れた創意を集め、集客力を強化するための取り組みを応援してまいります。また、「アンパンマンこどもミュージアム」の立地を支援し、交流人口の拡大による地域経済の活性化を図るとともに、次世代の骨格交通として建設を進めている地下鉄東西線沿線におきましては、特色ある地域資源を生かした魅力あふれるまちづくりを進めてまいります。

続きまして、新年度に実施する重要施策の体系についてご説明をいたします。

第一の柱は、市民協働を原動力とするまちづくりであります。本市が市民活動サポートセンターを設置して十年になります。地域に埋もれている資源を生かしたコミュニティビジネスの立上げを支援するなど、市民による主体的な公益活動を積極的に応援し、市民協働の次の十年を築く第二ステージに歩みを進めてまいります。

次に、地域コミュニティの活性化を図るため、区役所が中心となり町内会をはじめ地域のさまざまな主体と連携しながら、災害対策や健康づくりなど多様な分野でコミュニティづくりに取り組んでまいります。加えて、コミュニティ・センターや地区集会所等に対する地域のご要望へのよりきめの細かな対応を図ってまいります。

また、若い世代の地域づくりへの参加を促すまちづくり実践塾や学生とNPOなどを結び合わせるインターンシップなどにより、若者の地域活動への参加を応援してまいります。加えて、男女共同参画フォーラムを開催するなど、男女が共に個性と能力を発揮することができるよう男女共同参画を推進してまいります。

第二の柱は、未来を創造する子どもたちを健やかに育むとともに、未来世代に良好な環境を引き継いでいく取り組みであります。まず、認可保育所の前倒し整備に加え、せんだい保育室や家庭保育福祉員、幼稚園の預かり保育など、さまざまな保育資源を最大限に生かして、保育サービスの拡充に取り組んでまいります。また、休日保育の充実に努めてまいります。

さらに、児童館の整備や地域と学校が連携した放課後子ども教室の設置を進め、放課後児童の安全な居場所の確保を図るとともに、地域で子どもを育む環境を充実させてまいります。

次に、子どもたちが自立して生きていく力を身に付け、社会に羽ばたいていく基礎となる教育の充実を図ってまいります。まず、地域との連携による学校支援地域本部の設置の推進や教職員研修の充実などにより、確かな学力の着実な育成を図ってまいります。また、鶴谷特別支援学校の二期工事に着手するとともに、特別支援学級に指導支援員を新たに配置し、障害のある児童生徒のための教育環境づくりを進めてまいります。加えて、高校生等の修学資金の借入支援制度を新設いたします。

地球環境を守り、杜の都の良好な環境を保全・継承する取り組みとして、まず、本市の環境政策の基本となる杜の都環境プランを策定してまいります。大学等と連携し、環境教育・環境学習に携わる人材の育成を進めるとともに、小学校へ太陽光発電施設を設置するなど、地域におけるグリーンエネルギーシステムの普及を目指してまいります。また、紙類リサイクルの推進やバイオマスなど再生可能エネルギーの利活用の促進などにより、資源循環型社会の形成に取り組んでまいります。

第三の柱は、都市の活力と創造力の向上を目指す取り組みであります。まず、離職した非正規労働者や中高年の求職者を対象に集中的な再就職プログラムを実施するとともに、学校と求人企業の採用担当者の連携の強化を図るなど、地域の雇用確保に全力で取り組んでまいります。

中心部商店街につきましては、商店街ごとの個性を生かした取り組みを積極的に支援するとともに、空き店舗活用のモデル事業としてアンテナショップの運営を支援してまいります。また、東北大学に設置された情報知能システム研究センターの運用支援や企業連携による試作品開発の支援等により、地域の中小企業の開発力の強化を図ってまいります。制度融資枠につきましては、これを大幅に拡充し、地域の中小企業の皆さまの資金繰りの支援に万全を期してまいります。

次に、官民一体となった継続的な取り組みとして仙台・宮城「伊達な旅」キャンペーンを実施するほか、広域的な観光ゾーンとしての魅力を向上してまいります。また、APECや国際的なスポーツイベントの開催等を契機とし、市民の国際交流を推進するとともに、仙台の知名度アップに取り組んでまいります。市民に安心な食料を提供する農林業につきましては、市内農産物の地産地消の推進や農商工連携のビジネスモデル創出の支援などにより、その振興に取り組んでまいります。有害鳥獣対策につきましても、支援の強化を図ってまいります。

また、仙台圏のミュージアム施設のネットワークを強化し多様なイベントを開催するなど、ミュージアム都市構想の実現に向けた取り組みを進めるとともに、スポーツを通じた活気あるまちづくりを推進してまいります。

さらに、魅力ある動物園づくりなどにより、都市の魅力の向上に取り組んでまいります。

第四の柱は、すべての市民の安心で豊かな暮らしの実現を目指す取り組みであります。まず、宮城県沖地震等の災害に備え、消防ヘリコプターの更新を進めるとともに、地域の皆さまと連携し災害時要援護者の支援体制の確立を図るなど、災害対応力を強化してまいります。また、救急患者の受入体制を拡充するとともに、救急現場における医師の活動体制の充実を図るなど、市民生活の安心を確保してまいります。加えて、人材の養成を進めるなど、自殺対策を強化してまいります。

次に、高齢者の健康寿命の延伸を図り、一人ひとりが健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、高齢者の健康づくりと総合的な介護予防の取り組みを展開してまいります。

また、(仮称)南部発達相談支援センターや障害児通園施設の整備を進めるほか、障害児の放課後ケアや障害者の家族支援を拡充するとともに、働く意欲のある障害者の就労支援の強化等に取り組み、障害のある方々が自立した地域生活を送ることのできるまちづくりを進めてまいります。

新市立病院につきましては、救急医療や災害時医療など、地域医療の拠点としての整備に向けて実施設計を行います。

第五の柱は、都市の発展の基盤をつくり、都市機能の向上を図る取り組みであります。まず、機能集約型の都市構造の形成に向けた取り組みを本格化するため、土地利用など都市整備の指針となる都市計画の方針や公共交通を中心とした交通体系を構築する総合交通戦略を策定するとともに、都市計画道路網の見直しを進めてまいります。

次に、路線バスの運行が困難な地域や高齢化が進む郊外住宅団地などにおける地域課題について対応策を調査検討してまいります。また、公共交通利用促進の観点から、すべての学生・生徒を対象とした「学都仙台・市バス地下鉄フリーパス」を本格実施してまいります。

地下鉄東西線につきましては、一日も早い開業に向けて着実に建設を推進してまいります。また、(仮称)仙台港インターチェンジへの接続道路や幹線道路網の整備を進めるなど、広域交通体系の形成を図ってまいります。

都心地区におきましては、仙台駅前西口広場の再整備計画の策定や東西自由通路の架け替えに向けた設計、総合的なバスターミナルの調査検討など、仙台駅周辺の結節機能の強化を進めてまいります。

また、南部の広域拠点であるあすと長町地区、東西線の起点となる(仮称)荒井駅周辺、富沢駅周辺地区、仙台商業高等学校跡地等につきましては、必要な都市機能を誘導するなど、各地域の特性に応じたまちづくりを進めてまいります。加えて、公共建築物や下水道等の中長期的な視点に立った計画的な維持管理・更新等の対応について検討を進めてまいります。

さらに、仙台駅前の景観形成に向けた基準を作成するなど、杜の都にふさわしい景観や街並みづくりに取り組むとともに、緑豊かで美しい杜の都づくりの方針となる緑の基本計画を策定してまいります。

以上、申し述べました新年度の取り組みの確実な推進はもとより、時代の変化に対応し、将来にわたって必要な行政サービスを安定的に提供していくためには、より効率的な行政経営への改革が必要不可欠であります。そのため、今年度内を目途に策定する新しい行財政改革計画を強力に推し進めてまいります。

まず、エル・ソーラ仙台をはじめとする公共施設のあり方など、事務事業の見直しを進めるとともに、敬老乗車証を持続可能な制度とするための見直しをはじめ、市民の皆さまのご意見を十分に伺いながら、受益と負担のあり方についても幅広く見直しを進めてまいります。また、ガス事業につきましては、引き続き民営化の取り組みを推進してまいります。

さらに、外郭団体につきましても、公益法人改革への対応や指定管理者制度の運用状況などを踏まえ、経営力の強化や統廃合を推進してまいります。また、職員数の削減を進めるとともに、全庁を挙げて新しい課題に果敢に取り組み、市役所の自己変革を推進してまいります。

仙台の未来を創る行財政改革につきまして、私は、大胆に改革の核心に迫り、断固として成し遂げてまいる所存でございます。さらに、政策形成過程の一層の透明化を図り、市民の市政への参画を図るとともに、さらなる市民協働によるまちづくりを行う仕組みを充実し、市民とともに進める行政経営を進めてまいります。そのため、局の再編により、企画調整局と市民局を新たに設置し、中長期的視点での重要施策の企画・調整と市民協働によるまちづくりを推進する体制を強化してまいります。

市政を取り巻く課題は複雑・多様化し、より厳しさを増しています。しかし、私はこの困難に決して怯むことなく、市民の皆さまの「行動する市民力」を結集し、そして、すべての職員が一丸となって、仙台の新しい未来を切り拓いてまいる所存でございます。

以上、市政運営の所信の一端と施策の大綱について申し述べてまいりました。議員各位及び市民の皆さまのご理解ご協力を心からお願い申し上げます。

平成22年2月17日 仙台市長 奥山 恵美子

※ただし、平成22年2月23日に一部訂正あり

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